「忘れることだ。お前は運が悪かった。それだけだ。」
言うなり、もうようこに興味をなくしたのか、実験準備室の壊れた扉をくぐって入っていった。
ようこは立ち上がりふらふらと少年の後を追って扉をくぐり・・・絶句した。
先ほどの青沢の姿をグロテスクだ、などと思ったようこであったが、これはそれの比ではなかった。
ようこは扉のわきで思わず嘔吐した。血と胃液の臭いが混ざって何とも言えず吐き気が消えない。
実験準備室の真ん中に置かれたいつもは書類が置かれている机の上には女生徒が三人、横たわっていた。
どこにでもあるパイプの長机を二個くっつけた机の上に裸体をさらす少女三人はすでに絶命していた。
その裂けた腹からは、ぞわりぞわりと黒く小さなモノが無数に蠢く。蜘蛛だ。
少女達の顔はまるで眠っているかの様に安らかな表情で、それ故にその子蜘蛛達の姿が異様に映る。
少年は実験準備室のガラス戸の棚から適当に薬品を取り出すとその少女達にぶちまける。
そしてまだノブをぶすぶすと燃やす炎を破片ごと拾うとそのど真ん中にひょいと投げ入れた。
ごおっと派手な音を立てて少女達と蜘蛛は燃えた。
ようこは気が遠くなるのを必死で抑えながらよろよろと立ち上がる。
「・・・・私もそうなっちゃうの・・・?」
青沢がどういう方法で彼女達に子蜘蛛を産み付けていたのかはようこにはわからなかったが、
人間のそれとそんなには変わらない筈だ。
震える声でぽつりとようこがつぶやくと、少年は一瞬間を置いてから、
「ふむ?・・・確かに、お前には青沢俊夫の「匂い」がしみついてはいるが・・・・」
ようこは振り向きもせずに言う少年のせりふの意味を理解しかね言葉をさがした。
少年はひとしきり少女達とそしてその腹の中の蜘蛛が燃えるのを見届けると、
くるりとようこの方に体の向きを変え、よろよろしているようこの足を問答無用に払った。
ようこは短い悲鳴を上げると見事にすっころんで頭を床のタイルに強打、そのまま動かなくなる。
少年は動かなくなったようこの髪を乱暴につかんで仰向きにさせると呼吸音を確認し、
足を持ってずるずると引きずって廊下まで出た。
そして今度はようこの制服の襟首を引っつかむと玄関に向かって走り出した。
年頃の少女に対しての扱いとしては乱暴すぎだし粗雑ではあったが、
少年はかまう事無く先ほど走った廊下をまっすぐに走り、玄関にまで到達すると、
ようこの体をまるでゴミステーションにゴミ袋を投げ捨てるかのように玄関の冷たいタイルの上に投げ捨てた。
ようこは投げ出され、低くうめいたが少年は気には止めない。
きびすを返すと再び新校舎の方角に走り出した。
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