僕は今、年をごまかしてバイトをしている。
理由は簡単で、どうしても欲しい物があるからだ。
パーソナルコンピューター。いわゆるパソコン、と言う奴だ。
前に使っていたノート型のバイオは二週間前の停電の時にどういうわけか壊れてしまったのだ。
お陰で僕は自分のサイトの更新もままならず
インターネットカフェ通いを余儀なくされている。
最新型の、とまではいかないが、それなりに充実した機能の物を買いたい。
お年玉の貯金を叩いても三万は足りない。
こずかいの前借りも期待できない。(既に半年分はうけとったが)
姉に借金でもしようか。いや無理だ。
たしか彼女は先月馬鹿高く、やたら豪華で分厚い「なんたらオカルト大全集」とやらを通販で買っていた。
全十二冊だか三冊だかのその本のページをぱらぱらとめくっては
しまりの無い顔をしていたのを記憶している。
正確な値段は聞いていないが、僕に三万も貸してくれる程の金銭的余裕はないだろう。
そういう理由で僕は今、ここでアイスを売り捌いていた。
学園前平和公園に屋台を出しているアイス屋、ルゲイエ・アイスのアルバイト、
僕こと小山由紀夫(こやまゆきお)は現在少々老け顔な十四歳。
知り合いにさえチクられなければ、予定金額まで働けるだろう。
もしかしたら年がばれてもこのまま働き続ける事が出来るかも知れない。
ここ、ルゲイエ・アイスのバイトは頻繁に人が入れ替わる。
新しく人が入っても直ぐにやめてしまう。
今現在、支店長の宮前しずく(みやまえしずく)さんの次に僕が長く勤務している事になっている。
ルゲイエ・アイスは慢性的な人手不足なのだ。
宮前さんはまだ23歳と若かったが、真面目で頭がよくて、加えて凄く美人だった。
肌の色が白くて、黒い髪をいつも綺麗にアップにしている。
礼儀正しくて優しいし、理不尽に怒ったりイライラしている所を見た事がない。
僕の理想の女性像を具現化させたようなヒトだった。
だから僕は目標金額までお金がたまってもここで働きたいと思っている。
宮前さんと一緒に仕事が出来るなら、どんな事でも我慢できる様な気がする。
不謹慎な物言いだが、「心に正直に」が僕の小さい頃からのモットーなのである。
例えこの場所で、耐え難い程の超常現象が起ころうとも。
そんな事は、僕の恋愛事情に対して酷くちっぽけな、些細な物だ。

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