ルカ・ルサは甘党である。
単純に甘い物を「多く」食べる事で言うなら間違いなくルカは世界一の甘党だろう。
彼の一日の食事は三食全ていわゆる「お菓子、デザート」の類なのである。
彼は好んでそれを食べる。だから、本当の意味での「甘党」だと言える。
しかしだからと言ってルカはぶくぶくに太っている訳でもないし、栄養が偏って体が悪いという訳でもない。
顔がにきびだらけと言う事はないし、虫歯も一つだって無い。
なにしろ、彼は食物を一切その体には吸収していないのだ。
その全てが便として排出される、という訳ではない。
口に入れ、人間で言う所の胃に当たる場所に到達した時点で別のエネルギーに転換されるのだ。
それは別に甘い物でなくてはならないという訳ではない。
むしろ、食べ物である必要もなく、極端に言えば生き物である必要もない。
ルカは本当に言葉の通り、甘い物が好きなだけなのである。
相棒が仕事で留守の一時間だけ暇が出来る。
この一時間を利用して「学園前平和公園」に行こう。
学園前、と銘打っているだけあって「竜神学園」と道路を挟んで目の前に存在する公園である。
竜神学園は幼稚園から大学まで収容する巨大学園都市。
その広大な学園領は一都市と言っても過言ではない。
この公園はその学園理事長竜神健一郎の私有地であるが、市民の為に開放しているのである。
公園には休日ともなれば沢山の屋台が並ぶ。
クレープ、アイスクリーム、ガトーシガレ、ドーナツ、タイヤキにおやき。
今日の目当てはアイスクリーム。「ルゲイエアイス」のチョコトリプル。
ルゲイエの売りは絞り立てミルクを使っている新鮮さ、加えて週毎に変わるメニューの豊富さ。
ノーマル味の15種と、チョコレートをたっぷり使った5種類のアイス。
このアイスクリームをより美味しく食べるためにルカは朝も昼もチョコレートを抜いたのだ。
一番下にオーソドックスなチョコ、真ん中にチョコチップ、そして一番上にはビターに甘いモカチョコ。
三時のおやつはこれで行こう。
ルカは一人ウキウキしながら、しかし表情には出さずに、家を出る。
公園は真ん中に小川が走っており、学園側に小さな丘とアスレチック、
学園とは反対側に川と直結している噴水を有する小さな泉を中心にひらけた広場。
公園をぐるりと囲んでいるのは桜を中心にした花の綺麗な大木達。
屋台が集まるのはベンチがいくつも設置されている広場の方。
ルカはアイスを買うと、ルゲイエの一番近くに設置されている真ピンクの二人掛けベンチに腰を下ろす。
平日とは言え公園は人で溢れている。
犬の散歩をしている人、噴水で遊ぶ幼児達、その周りには井戸端会議中の母親達、
学校帰りなのだろうか、屋台に群がる制服姿の少女や少年達。
しかしこの真ピンクのベンチには誰も近づかない。
ひとえにそれはこのベンチにまつわる怪談話のせいであった。
竜神学園の教師と付き合っていた女生徒がその教師に殺され、
自分が死んだ事に気付かずにこの公園でずっとその教師を待っているのだ、と。
この噂には尾鰭がついて「ベンチに座った者は必ず大切な人間と死に別れる」と言われている。
しかしルカはかまう事なく毎日ここに座っている。
ぺろりとモカチョコに舌を這わせ、ルカはぼんやりと澄み渡る青空を眺めていた。
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