私達が見ている世界と言うものはいつも断片的で、それ自体の意味がわかりにくい様に作られていると思う。
私が見た「彼」は、まさしく何かの断片であり、私にはその全容を知るすべもない。
それは何かの前兆だったのか、終わりだったのか、そもそもそれが何であったのかもわからない。
いくばくかの余韻を残しているものの、私はまた日常へと戻ってきた。
彼に出会ったのはまだ雪も溶け切らない初春の頃。
珍しく雲ひとつ無い夕暮れ空が印象的な放課後の出来事だった。
私はきっとあの日の事を忘れなれないだろう。
だがそれでもかまわない。
ただ心に残るしこりが一つ。
結局の所、私は先生にとってどんな存在だったのだろうか。
私にとって先生はどんな存在だったのだろうか。
先ほどから降り始めた雨が、日光を浴びて熱を発するアスファルトに注いでいる。天気雨だ。
いつの間にか雪は完全に姿を消していた。季節の移り変わりははやいものだ。
もう夏が近い。
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