『真夏の奇跡』

気がついた。
蝉の音やかましく響くこの熱帯ジャングルの様なうっそうとした森の中で、
わたしは頭を振りながら上体を起こす。
ここはどこだろう?
いや、そもそもわたしはどうしたんだったっけ?
起き上がろうとして、右足首に痛みを感じ、再びしゃがみこんでしまう。
ひねった様だ。立ち上がれない。右手首も痛い。なんだか右半身全てが痛い。
空を見上げた。青く澄み切った空。
その一角に、不自然な人工物がちょこんと鎮座している。
不自然。不可思議。わたしには既に「不快」な域にまで達している。
わたしがさっき飛び降りた学校の屋上がそこにあった。
逆さまに空に張り付いている学校だけがぽつんと遥か上空に存在する、なんてシュール過ぎる。
忌々しい、「学校」。寒々しい記憶だけが残る、「学園生活」。
だがしかし、今のこの状況をなんて説明すればいいんだろう?
散々な学園生活に、ピリオドを打つつもりが、とんだ「奇跡」の押し売りじゃない?
痛む足首をなでながら、わたしはとんだ余計なお世話よ、と神様に悪態をついた。


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